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2007年7月15日 (日)

その2

<○人対△人>の概念

就労系福祉事業の特徴として、あるいは就労系福祉事業そのものを解明する際の物差しのひとつとして、この<○人対△人>の概念というものがあります。

職員あるいは職業指導員○人に対して、障害者あるいは作業員△人見ながら作業を遂行するのか、という問題です。

事業所全体として、例えば指導員3人に対して作業員20名というデータ。それをさらに細かく分析します。指導員Aはおもに作業Dに従事し、3人の作業者を抱えている。(例えばグループ就労のような形。)指導員Bは作業Eで、作業員10人。指導員Cは作業Fで作業員7人。…こんな感じでさらにそれぞれの事業収入と粗利率を出すわけです。

企業の世界では、一定規模の生産性を前提として、そこで必要な労働者数が過剰ならば、リストラ等の手段で生産性やその規模に合った人員に合わせていきます。しかし福祉の世界は違います。「20人いないと事業が成り立たない」そういう判断が加わってくるわけです。しかし20人集めたところで、例えば半数を遊ばせておくわけにはいかない。そういう現場の苦悩もあるわけですよね。

一般に企業の世界では、高付加価値の労働は○であって、低付加価値の労働は×です。(薄利多売形式云々の問題は別として。)しかし福祉の世界ではそう単純にいかない部分もあるわけです。

ちょっと見て行きましょう。(経費等の問題は割愛して考えます。)

(A)指導員1名と作業員2名で年収300万円の事業を行う。

(B)指導員1名と作業員10名で年収300万円の事業を行う。

企業の価値観だけで見た場合、(A)は(B)よりもいい事業です。作業員一人当たりの収入も(A)の方が断然いいわけです。

企業的価値観における判断としては、(B)から(A)に切り替えていくべきということになるのでしょう。

でも(A)の事業だけで、利用者=作業者20人抱えるということは、指導員を10人用意しなければならないということになるわけですよね。(単純化していえばの話ですけれど。)そうすると、就労支援事業活動収支としては、高工賃を払えて○なわけですけど、福祉事業活動収支としては人件費コストが高騰し、×なわけです。「就労~収支」で事業が潰れることはありませんが、「福祉~収支」如何では、事業も潰れます。

 むしろ(B)のような、指導員一人で多くの作業員を見ることができる作業を有しているということは、その後の事業展開がしやすくなります。新たな事業を起こそうとした場合、いきなり指導員一人がたくさんの人数を見きれるわけはありません。自分自身も試行錯誤なわけですから、少人数と集中的に関わりながらしばらくは作業を進めていくことになります。作業を提供できず、待たせるだけになってしまっている人を目の前に5~6人並べて「さあ、新しいことを始めるぞ」といってもそれがいかに難しいことかは現場の人間なら分かりますよね。まず全員に満遍なく作業を提供できる背景を作りつつ、指導員1名と少数の作業員で新たなことに取り組めるという環境づくりも実は大事な時もあるのです。そして軌道に乗ったときに大きく全体をシフトチェンジしていくことになるわけですよね。そういう意味で、ベースになる作業のあり方ということも就労系福祉事業の展開においては大切になってくるわけです。ひとりでたくさんの人数を集約できる作業を持っていることは、その付加価値の如何に関わらず、その事業所の強みとなるわけです。ただしそこに安住していたら、次の展開は見えてきません。

 この辺の現場ならではの事情は、企業的価値観だけでは見えてきません。

就労系福祉事業の成功事例として、「Aという作業からBという作業に(私が)切り替えて、事業は大きく前進した」という報告をよく聞きます。しかし忘れてはならないことは、Aという作業があり、そこに多くの作業員を集約できる背景が前提としてあったからこそ、Bという作業の導入とその切り替えがうまくいったということです。だから単純に非生産的(と思われる)事業を片っ端から否定して回ることがいいことではないのです。

それらの企業的価値観との違いは、<生産性・必要人員→労働者人員>という企業と、<必要労働者人員→生産性>という就労系事業のベクトルの違いを根本にしているのです。

これらは一例に過ぎないのですが、基本的には<○人対△人>の概念を事業所の経営分析の際の基準のひとつにすると、いろいろなことが見えてきます。

今日はこれでおしまいです。明日も仕事。本当は息子と釣りに行きたかったなあ。有給休暇を取ったあなたを責めているわけじゃないですよ。たぶん、きっと。

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