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2007年3月10日 (土)

親亀がグラグラすれば、一番上の孫亀が落下する。

 最近さまざまな事業所から電話、メールをいただく中で、私あてのものが割合としてかなり減ってきた。「ツカモトさんいらっしゃいますか」「タケイさんは」「サカジリさんは?」…。「ただいま席を外しておりまして…」と事務員さんのように対応しています。先日久々に(でもないけど)私あてに電話。「おおっ」と思ったら、レンタルビデオの延滞の催促。(犯人は妻と子供たちだな…。)
 
 最近心がけていることは、うちの仲間たち(いわゆる職員・利用者と呼ばれる人たち)に「顔」をしっかり持ってもらうということ。その方がお互いにとっていいと思うからです。それは私自身がこれまでさまざまな事業所様と触れ合うなかで考えてきたことです。 担当窓口の人は明らかに社長・上司の顔色を伺いながらこちらに対応してくる。社長も明らかに「私が社長です」と顔に書いて、腕組みをして見ている(比喩ですが)。そういう時交渉相手である私の側は何を感じると思いますか?

① 目の前の交渉相手の向こう側を意識しなければならず、とても面倒であり、その交渉相手の言葉そのものに重みを感じなくなる。
② 「この交渉相手は社長に信用されていない人なんだなあ」=「ということはこちらもあまり信用できないなあ」。
③ この人と腹を割って話すのは損。

 こういうケースも多々ありましたが、それとなく切り捨てるようにしています。社長にも信用されていない交渉相手を、どうやって信用しろというのでしょうか。それとも社長自らが見積書から値段交渉まで全部対応してくれるのでしょうか。…それをしてくれる業者なら、丁寧にお付き合いさせてもらっていますが。

 こうした「顔をもって対応する」ということは、とても大切なことだと思います。とくにうちは障害者福祉・就労支援の現場。私が職員の「顔」をつくり託すということは、その職員も障害を持つ仲間たちの「顔」をつくり託すということに直結するからです。逆に私が職員の顔をつぶすと、それは仲間たちの顔をつぶすことに直結していきます。

 「親亀の背中に小亀を乗せて~小亀の背中に~♪」

 うちは障害者の地域生活と就労生活を支援する現場。例えば障害者の職場実習の例。実習中の障害者が与えられた作業をうまくできず四苦八苦しているとする。支援者がすぐに「責任者」ヅラしてそこに入ってきたり口出してきたりしたら、わざわざ「この障害者は支援者に信用されていないんだなあ」と実習先の企業に逆宣伝をすることにしかなりません。「最初はうまくいかなくても、彼なら自分で工夫して2~3日あれば克服できますよ」という顔をして遠くで知らん顔をしていればいいんですよ。イライラや不安は腹の中に隠して、耐えることも必要なのです。「責任者」ヅラをするのは、本当に自分が責任を自分が取るべき場面、土下座する覚悟があるときだけでいいんです。それ以外のときは相手の「顔」を立てる。

 うちの職員がさまざまな交渉をしている間、基本的には私は知らん顔、つまり「任せてますよ」という顔をしてその場から離れています。そうすれば交渉相手もうちの職員もとてもやりやすいのです。ということは、障害を持つ仲間たちも働きやすいのです。<私が信用している職員、その職員が信用している仲間たち>という立場で仕事に望めるのです。

 ただし、裏では全く違うのですよ。交渉前にその中味や考え方を巡ってかなり綿密に打ち合わせをします。あらゆるパターンを想定して、対応策を打ち合わせています。その対応策の裏にある考え方についても、ちゃんと説明し、交渉者の意見にも耳を傾けます。こちらが耳を傾けなければ、こちらの声は相手を素通りするからです。
 十分な備えがあれば、交渉の現場では知らん顔で臨めるのです。たいてい私は近くを掃除していたり、他のおしゃべりに加わっていたり、ぬか床の手入れをしたりしています。
 相手が堂々とできる背景を作ること。その背景を作るということは、事前にそれなりにしっかり関わるということ。

 さまざまな業者様のオフィスを訪問し、私なりに考えてきたことです。

 また先日こんなことがありました。ある業者様から苦情をいただきました。「本当にチラシをちゃんと配っているのか」ということがその中味です。マンション管理人からその業者に苦情=報告が入ったということがその背景にありました。普段なら、交渉はその担当者に任せて私は知らん顔をしているか、軽く挨拶をするか程度なのですが、その時は割って入りました。
 

 「うちが信用できないのなら、別に仕事をいただかなくても結構です。うちの仲間がそんな適当な仕事をするはずありません。」そう言い切りました。お互いヒートしましたが、あえて記録も全部見せて、その苦情をもらった日の担当者(障害者)を現場から呼び戻して説明させました。日にちとマンションの住所をいい「あの日、ここはどう配ったのか」を本人に聞きました。彼は答えました。

 「そのマンションは実は2棟あります。1棟は管理人の許可を取って集合ポストに入れました。もうひとつは管理人の代理という女性が管理人室から出てきて、その人の指示で所定の場所に24部置いてきました。」

 要するに管理人同士の引継ぎ連絡上の問題です。それがご丁寧に業者に連絡が入ったということです。しいていうならば、その日の報告で「例外的対応」としてその現場でのやり取りの詳細を報告していれば、業者様の不信は免れたはず、ということでしょう。それは後ほどみんなに伝え、教訓として話しました。
 状況を確認せず簡単に私が謝ってしまっていたら、「彼らならやりかねません。私は彼らを信用していません」と相手に宣言していることを意味します。本当に無実ならば、そうされた人は頭に来るか、やる気を失うかどちらかです。やる気を失えば、「信頼されたい」という意識が消滅し、本当にいい加減な仕事をするようにもなってしまいます。

 長くなりましたが、その現場がいい仕事をするかしないかは、お互いの「顔」をどう守り、立てるかということです。小便クサイ表現を使うと「信頼関係」です。

 先日、就労支援事業の立ち上げの書類を施設長予定の女性職員と一緒に提出しに行きました。その行政機関の担当の方が私に「事務員さんですか?」と聞いてきたので、「はい」と答えました。

 帰り道、その女性職員が大笑いで「何で事務員さんって答えたの? ちゃんと名乗らなかったの?」と聞いてきました。「べつに事務員でいいじゃん。事務やってるんだから。」
 
 その場で大切なことは、あなたが「施設長」として所轄庁の担当者と顔を合わせ、信頼されること。俺が誰かは関係ないでしょ!

 もっともこんなことをいちいち考える必要もないくらい、小さな現場が一番理想なんですけどね。おしまい。

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