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2006年9月30日 (土)

拓也とTシャツと私

昨夜、脱衣所でTシャツをポーンと脱いだら、Tシャツの裏に書いてある「○○拓也」という名前に目が留まった。そう、このTシャツは拓也のものだった。私はこの「拓也」ブランドの服をたくさんもっています。パジャマもトレーナーも・・・。私より少しだけ体の大きい拓也。5年ほど前、お下がりを私がもらったものです。

本当にいたずら坊主でした。福祉作業所から拓也の自宅までの送迎。他の仲間を玄関まで送るため私が車から離れるわずかな時間、戻ってみると何かいたずらをしていました。バックミラーが天井を向いていたり、私の上着が隠されていたり、後ろの席の座る順番が変わっていたり・・・。ご家族の都合で私が拓也と一緒に泊まった日に、夜トイレから戻ると私と拓也の布団が入れ替わっていたり・・・。「あれ?また拓也だな?」と聞くと、さも満足そうにニヤ~っと笑っていました。拓也は言葉を持っていませんでした。でもおしゃべりが大好きでした。周りの人が面白いことを言うと、絶妙のタイミングで、顔より大きい口をパカッと空けて大笑いしていました。

養護学校を中退して福祉作業所に飛び込んできました。学校のほうがいたずら友達もたくさんいて楽しいはずなのに、彼は実社会(福祉作業所)で働く道を、同級生たちよりも一足先に選んできました。彼は「とまりぎ」で働くことが大好きでした。廃品回収で、たまにボロ(衣類)の袋を道路の車に向けてぶん投げて大興奮していたこともあります。ヒヤヒヤしたこともたくさんありましたが、今となったらすべてが懐かしい思い出です。

彼は20歳の時、病気で他界しました。20歳という短い人生をさかのぼって考える時、彼が養護学校を中退して地域の中で思いっきり働いて・思いっきりいたずらして生きる道を選んだことは、正解だったように思います。もちろんそういう解釈ができるまで、5年という月日は必要としましたけど。

彼が亡くなってしばらくしてから、私はよく彼の家に遊びに行きました。カメを連れて遊びに行くと、ご家族でカメをかわいがってくれました。拓也の話をたくさんして、大笑いしていました。拓也がどんなにいたずら坊主だったか、全部言いつけておきました。私の妻が妊娠中に遊びに行ったときのこと。

「いつ産まれるの?男の子か女の子か分かってるの?」と拓也のお母さん。「男の子ですよ。名前は風歌(ふうた)って決めてます。予定日は6月の13日です。」と私。

「えっ?6月13日?そうなの・・・。」お母さんはそういって、また別の話に切り替わりました。しばらくして小さな声で「6月13日は、拓也の誕生日なんです」。「あ!そうだね!じゃあ、きっと拓也の生まれ変わりだね。きっとやんちゃないたずら坊主だね。」と私。

それで拓也のTシャツとかを「これ着てください」と私がいただくことになったのです。

わが子の誕生日と同じという事実、普通ならすぐに「うちの子と同じ!」と喜んで話したくなると思います。でも拓也のお母さんは、しばらく間を空けてそして小さな声で話したのです。これが障害者のお母さんのお気持ちなんだとその時思いました。「うちの子と同じ誕生日」ということを告げて、喜んでもらえる自信がないという感覚が、タイミングを遅らせたのでしょう。でも「拓也がうちの子を守ってくれる。いたずらもたくさん教えてくれる」私はそう確信したので、それをお母さんに告げました。

ローテーションで、この「拓也」のネーム入りのTシャツを着てそして脱ぐ時、これらの思い出をいつも一瞬にして思い起こすことが出来ます。そして風歌を見る時「拓也がついていてくれる」という気持ちも持ちます。風歌のいたずらがあまりにひどくなる時「コラ!拓也!いい加減にしろ」と怒りたくなるときもあります(笑)。

おっと、もうこんな時間。今日は船橋市小規模作業所連絡会の会合。明日は「白井梨マラソン」に私は障害者チーム「とまりぎジョギングクラブ」の監督として行きます。拓也の養護学校の同級生、くにちゃんも10kmに参加します。

拓也、明日はくにちゃんの背中を押してやってくれ!

では仕事に行きます。

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