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2006年7月30日 (日)

本当の地域福祉とは?

久々です。このブログ、行政の関係者など思いもよらぬ固い系の方々も読んでいることを最近知りましたので、行政に関係する話も少々・・・。私はあまり正面きって福祉行政に文句をいうタイプではなく、むしろ文句ばかりいっている人たちは逆に行政にしがみついているようで、「それはしたくない」と思ってきました。<文句ばかりいうくらいなら、無視したほうがいい。無視してもやっていかれるくらい、自分たちが福祉の力をつければいい>そんな感じで考えています。しかし今回は多少の忠告的な記事を書いてみようかな、と。

先日、県の主催する障害者の相談支援従事者研修に行ってきました。直接の目的は相談支援事業従事者(障害者ケアマネージャー)の資格を取るためでなく、新体系サービス事業のサービス提供責任者の資格のためです。

いろいろな人も読んでいるのでバリバリの福祉用語はここまでにしますね。簡素な表現に努めていきます。「子育て」などからこのブログに入ってきている人たちもいますので。

講義の概要はこんな感じです。障害を持つ方々の地域生活を支えていくためには、さまざまな困難ケースが存在します。そういうケースを決して切り捨てるのではなく、相談支援の担当者が本人や家族のニーズをしっかりとくみ取り、病院や地域の民生委員、就労支援の諸機関その他の関係者との「支援のためのつながり」を積極的に作り出し、当事者を中心とした「支援の輪」の会合などを通じて、その人にあった必要な支援のサービスの体系を計画する。本人の希望に即してその計画を実行し、たえず家庭訪問などを通じてその計画を検証し、時に修正し、継続的に本人と家族の生活を支えていく・・・。それが障害者の相談支援事業従事者の仕事だということです。福祉サービスは「施設から地域へ」がキャッチフレーズになっています。

お題目はすばらしい!あとはどうやってその仕事のプロを発掘し育てていくの?

皮肉っぽい問いかけをしたのはわけがあります。この研修、講師は行政担当者や福祉施設の施設長さんたちが担当していました。施設型福祉のプロの方々の語る「地域福祉」の講義でした。「困難ケースへの対応」・・・。でも実際はこれまで施設型福祉から多くの「困難ケース」を抱えた障害者が、時にははじき出され、ときには門前払いされ、行き場所をなくし小規模作業所などの「地域福祉」を頼ってきたのでした。いや、あまりに多くの人たちが施設型福祉からはじき飛ばされてきたことが、小規模作業所の今日の発展の主要な要因なのです。

小規模作業所は、直面するさまざまな「困難ケース」に向き合うために、何の教科書もない状態から、<病院や地域の民生委員、就労支援の諸機関その他の関係者との「支援のためのつながり」を積極的に作り出し、当事者を中心とした「支援の輪」の会合などを通じて、その人にあった必要な支援のサービスを計画する>というこの研修で提唱される「相談支援事業」を自然発生的かつ自発的に行ってきているのです。

いくつかの例。たとえばこの研修の講義をされている施設から「リストラ」されてきた障害者の例。(私たちの作業所だけで、この施設からの「リストラ」組だけで4名います。しかしこの講義を担当する施設長さんの就任前で、F市が直接運営していた頃のことなので、この施設長の名誉を傷つけるものではありません。むしろそういう状態から立て直してきたのが、この施設長さんら新スタッフなのでしょう。)

お母さんに連れられて「A施設から、他の場所を探すよう言われた」として私たちのところに面接に来た障害を持つその女性。お母さんと二人暮らしでその女性の障害者年金だけで二人暮らししているといいます。身なりや雰囲気からすぐに「施設にはじき出された困難ケース」だということはすぐに感じました。まず家庭訪問。

彼女の家には屋根がありませんでした。トイレも台所も床がなく、地面が出ていました。トイレに用を足すのでなく、この穴に直接行うしかない状態です。この状態から彼女だけ救うのであれば、障害者年金を使い、私たちのもつ生活ホームに入居すればいいのですが、それだけではお母さんが生活できません。親戚やご近所との関係、その他さまざまなことがらに首をつっこみ、いろいろな工面を行い、なんとかこの屋根のない家を解体し、プレハブの家を立てることができました。生活保護なども活用し、生活ホームで暮らすようになったこの女性だけでなく、お母さんの生活も立て直してきました。今は二人ともとても生き生きとした暮らしをそれぞれの場所でしています。

もうひとりの施設「リストラ」組の男性。多動で衝動的な行動もあり、時に周りを傷つけることもあります。施設では「作業」はほとんど行わず、広い場所でひとりで走り回るだけだったといいます。「隔離」とはこういうことをいいます。彼がうちに来たとき、まずは施設と逆のことを実践しようと決めました。人々の輪の中で彼が必要であるという環境を作ることです。言葉はあまりありませんが、体が大きく力がある、そして道の記憶に長けている。そういう彼にぴったりの仕事を探す。

ありました!地域生活情報誌を車で配布員のお宅に配送する仕事です。この情報誌の担当者と話をし、彼についても詳しく知ってもらい、彼のための仕事としてこの「情報誌配送」の仕事をもらいました。この担当者は熱心に話を聞いてくれて社内の意見を調整し、仕事を回してくれたのです。しかしこの新聞、いったいどのくらいの重さになるのでしょう。この重い新聞をかれは両手で抱え、道を一発で覚える天性の才能を発揮して配送場所に走って配ります。この仕事を彼がはじめてもう8年。長年配達員をしている方々とは彼はもう長い付き合いになっています。「B君、この前○○駅の近くのレストランにいたね。お母さん美人ねぇ~」などと話しかけられます。彼はこの仕事を始めてほとんど休むことはありませんが、それでもたまに休むときは多くの方々から「B君どうしたの?」と心配の声をかけてもらいます。彼が施設の「問題児」から地域で働く社会人に成長することは、お母さんをはじめとした家族の彼の見方にも大きく影響します。そのことは家族関係にもつながってきます。毎月福沢諭吉の入った給料袋をもってくると「おつかれさん」「ありがとう」と家族に声をかけられます。

前者は彼女の生活背景作りから生活を支えてきた例、後者は彼の直接的な地域生活(仕事)からかれの生活背景を変えてきた例で、いずれもA施設リストラ組の例です。

たまたま講師として現在のA施設の方がいらっしゃたので上記の例を挙げましたが、その他数多くのケースが作業所の現場には存在します。知的、身体、精神の障害のうちいくつかを重複しているケースは施設から敬遠されてしまい、うちにやってきます。また知的障害でも「数学にはめっぽう強いが、人間関係など抽象的なものはまるでできない」というパターンは障害者手帳をもらえないケースがあり、障害者手帳がなければこれらの「施設」は利用させてもらえません。あるいは本人や家族がその「障害」を認めず、それゆえ必要な福祉サービスも受けられません。一般枠で就職を試みても全くダメで、ある人は「職員希望」として、ある人は「ボランティア希望」として、この地域福祉の門をたたくというケースもあります。こういうケースで必要なのは、まず本人と家族が「障害」を理解し受容するための関わりです。それは同時に周りの「障害者」を受け入れて仲間になり、なおかつ共通する自分の「障害」を前向きに受容して自分の人生を切り開いていく、そういう過程を準備するのです。ある人は自分の「障害」を素直に受け入れつつ、「自分の力でもう一度就職を目指したい」と訴え、障害者枠で自力で就職をつかみ、今でも頑張って働いています。またある人は、私たちが作成したプランに基づいて、障害者手帳、障害者年金を(私たちの支援で)取得し、私たちが準備した彼のスポーツなどの余暇活動での活躍の場で自信もつけて、精神的自立を目指した「生活ホーム」(障害者の共同生活)での生活を試みて、そして私たちのジョブコーチ(就職をお手伝いする人)をつけて、無事就職していきました。

こういうケースは小規模作業所というこれまでの「地域福祉」実践の場においては無数にあるのです。私たちは、こうした施設の嫌う「困難ケース」に向き合う中で、この研修でうたわれているような「障害者ケア・マネジメント」のノウハウは、体で身につけてきています。もちろん教科書にはなっていませんし、私たちは教科書を書くほど暇ではありません。(ブログ書いてんじゃねえか!って?・・・日曜日なので許してちょ!)

さて県の研修のあと、我がF市の障害福祉課に訪問。「施設から地域へ」、その要となる市の事業としての「相談支援事業」、F市はどう考えているのか?

相変わらず、これまでの「施設型福祉」の顔に、「地域福祉」の看板を持たせて並べるだけのことでした。おめでたいことです。制度が変わっても、それを担う人間の価値観が変わっていかなければ、あるいは制度の変化に対応する視野の広さを獲得しなければ、なにも変わっていきません。福祉の世界で「制度」を考えるということは、「制度」の隙間からこぼれ落ちていく人たちの対応を考えるということが実は中心的な課題となるのです。しかし我が愛する「制度」の担い手さんたちには、この隙間の存在は実に小さく見えるようです。

さてどうしよう。県全体の「福祉作業所等のあり方研究会」で真の地域福祉の担い手を束ねていくべきか、あるいはF市の現状をちょっとつついていくべきか。・・・考えての結論。私はあくまでも「地域福祉の片隅」で、愛する仲間たちとともに、この地域の地域福祉の活動に邁進しよう。それが一番スッキリする形です。楽しいし。

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